私は、毎年ガイドでキリマンジャロに行っているのですが、その時にはお客様に「ダイアモックス」という薬をおススメしています。
ダイアモックスは高山病に効く薬で、10回以上キリマンジャロに同行している私ですが、実際飲む人と飲まない人の違いを実感しています。
だったら、日本の山でも高山病にかかりやすい人は飲んだほうがいいんじゃないの?と思うのも当然ですよね。でも私は、日本の山で高山病対策にダイアモックスを使うことを推奨していません。なぜでしょうか?今回はその理由について書いてみたいと思います。
高山病対策の薬、ダイアモックスとは?
ダイアモックスは、もともと緑内障の薬で、成分名はアセタゾラミドと言います。
日本旅行医学会のページに処方してもらえるドクターのリストがあります。
ダイアモックスの何が効くのか?
高山病対策でのダイアモックスのの効果は、「利尿作用」と「睡眠中の呼吸促進」です。
高山に行くと、血液をサラサラに保つために水分を大量に飲む必要があります。 例えば、キリマンジャロでは1日最低2リットル、エベレストでは4-6リットル水分を摂取するのが普通です。 しかし、それがむくみなどで体内に残ってしまうと新陳代謝になりません。
ただ、体はそんなに処理しきれないので、利尿作用のあるダイアモクスを使って体外に出します。
逆に言うと、ダイアモクスを飲み始めたら利尿作用が強まるので、大量に水分を飲まなければ出るばかりになってしまいます。
また、睡眠中に呼吸が促進されるのも高山病にはプラスです。
高山病が悪化するのは、呼吸数が落ちる睡眠中に多く、呼吸が促進されるのはその悪化を防ぐことができます。そのため、睡眠時無呼吸症候群の処方薬としても使われるようです。
しかし、デメリットもある
じゃあ、メリットばかりでデメリットはないのか、というとそうではありません。
通常、副作用として言われているものに、手足の指先のピリピリとしたしびれと味覚障害、があります。手足のしびれは、ちょうど正座をし続けた後のしびれのような感覚です。
ただ、ちょっとしたしびれや味覚障害やちょっとしたしびれぐらいだったら、高山病の苦しさに比べたら、飲んで楽に登りたいという人もいるでしょう。山小屋の食事を楽しむために登るわけでもないですし。
私が思う、登山で一番大きなデメリットは、「利尿作用」によりトイレが近くなることと、それに伴い、水を大量に飲まなければならないことです。
大体、休憩ごとにトイレに行くレベルでトイレが近くなります。夜寝ている間もトイレに数回起きださなければなりません。確かに、富士山などトイレが頻繁にあるような登山道もありますが、シーズンになるとそのたびに並ぶほどの人数になります。そのデメリットはかなり大きいと言えるでしょう。
そのため、日本の山で「ダイアモックス」のメリットデメリットを考えたときに、デメリットのほうが大きいと思うのです。
日本の山では、そもそもメリットもそんなに大きくない
上記の通り、ダイアモックスのメリットは睡眠中の呼吸促進と利尿作用。睡眠中の呼吸促進に関しては、何泊もすることでより効果的になるもの。1泊でも効果が出ないわけではありませんが、標高の高い場所での滞在時間が長ければ長いほど、効果が出るものになります。
日帰りではこの効果は出ませんし、1泊程度であれば効果は薄いでしょう。キリマンジャロは登頂までに山中4泊。登山期間が大きく違います。
では、日本の山でのおススメ高山病対策ドーピングは?
高山病対策でできることは水を飲むこと、ゆっくり行動すること、深呼吸をすること、です。
が、どうしてもかかりやすい方は、痛み止め、吐き気止めなどの市販薬でドーピングするのがいいんじゃないかと思っています。
頭痛が出やすい人は痛み止め、吐き気が出やすい人は吐き気止め。
薬を飲んでもいいですか?と聞かれることは多いですが、もう飲もうかと思っている時点で何らかの症状が出始めているわけで、例えば頭痛の時に我慢して登り続けるよりは、痛み止め飲んで、痛みが取れてから(気持ち的にも)元気に登れるほうがいいと思うのです。
薬まで飲んで登りたくないわ、という人もいれば、なんらかドーピングしてでも楽に登りたい、いろんな考え方があると思いますが、「ダイアモクス」のメリットデメリットについて、参考になれば幸いです
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