山でバテにくい体づくりをしたい、そう思ったことはありませんか?そのために必要なことは激しいトレーニング?ダイエット?
ロカボ(=低糖質)登山では、山でバテにくい体を作るということは、体の脂質が燃えやすい体を作ること、と考えます。1日6時間以上体を動かし続ける登山において、筋肉中のグリコーゲンなどの糖質だけでパフォーマンスを維持するのは不可能です。だから、脂質をいかに効率よくエネルギー源とするかが大事になってくるのです。
行動食と言えば糖質の事ばかりが言われます。糖質の方がエネルギー源として燃えやすく、トレーニングしていない体でもエネルギーに変えやすいからです。しかし、体の中のグリコーゲンはすぐに消費してしまうため、糖質メインで行動する場合、糖質を入れ続けないといけません。
ロカボ登山では、ほとんどの人の体内に20%前後はある脂質に注目します。体重60キロの人で体脂肪率20%だとすると12キロは脂肪。体脂肪の20%は水分と言われていますので、それを除くと、9キロちょっとの燃える脂肪を蓄えていることになります。9キロということは、約8万キロカロリー蓄えているのです。この体脂肪は、考え方によってはただの重荷、別の見方では重要な燃料。ロカボ登山ではこれを燃料として活用するためにはどうすればいいか、を考えます。
ロカボ登山とは
ロカボ登山とは、ローカーボ(=低糖質)登山の略です。糖質が主流となっている登山中のエネルギー源を脂質中心に置き換える登山のことです。
目的はシンプルで、登山中バテにくい体を作ること。バテないために体の中に一番エネルギー量が多く蓄えられている脂質を効率よく燃やす体を作っていこう、というのがロカボ登山の目指すところです。
バテないために、しっかり糖質を含んだ行動食を摂りましょう、と言われたことはありませんか?確かに糖質はエネルギー源としてすぐれていて、すぐに体を動かすエネルギーに変わります。
ただし、デメリットがあって、糖質がエネルギーとして取り込まれる際に血糖値を上げ、その後インスリンの効果によって血糖値が下がります。この血糖値の乱高下をうまくコントロールしないと、体のだるさや眠気につながります。昼食などの直後、体が動きにくいというのは多くの人が経験しているでしょう。あれが血糖値のせいです。
もちろん、うまく糖質での動かし始めから脂肪の燃焼をコントロールできれば、糖質は大きな武器になります。そのためにはGI値で行動食を摂るタイミングを考えていかなければなりませんが、これがかなり厄介。ほとんどの販売されている食品で成分表があって、糖質、脂肪、タンパク質などの量が分かりますが、GI値は書かれてないので、コントロールが難しいのです。
ロカボ登山を成立させるために必要な2つのこと
行動食から炭水化物を抜けばロカボ登山が成立するか。話はそう単純ではありません。
現代人の食生活は、糖質に支配されすぎていて、登山にかかわらず糖質中心にエネルギーを使う体になっています。これを登山中だけ糖質を減らしてもいきなり脂肪がガンガン燃え始めること言うことはありません。
ロカボ登山を成立させるためには2つのことが大事になってきます。
1つ目は脂肪が燃えやすい体を作るためのトレーニング。現代人の食事は炭水化物が主体になっています。だから、脂肪を燃やすのに必要な燃焼回路がサビついてしまっています。この回路をしっかり回すようなトレーニングをしなければなりません。そのためには、トレーニングのタイミングと時間が大事になってきます。
2つ目は登山中の行動食です。ここで糖質を摂ってしまうと、元も子もありません。また、脂肪が燃えやすくなるために行動食中も脂質を摂って燃えやすくすることが大事です。
この2つを合わせて、ファットアダプテーション」と呼ばれています。
ロカボ登山のトレーニング
まずは、脂肪が燃えやすい体を作ること。そのためにはトレーニングが必要です。それも、ちょっとしたポイントを守ったトレーニング。以下のことを守ってトレーニングしてください。
- 朝イチ、食事前にトレーニングすること。
- 汗ばむくらいのトレーニングにすること。
- 30分以上のトレーニングにすること。
- 週2回程度はトレーニングすること。
1つめの朝イチにトレーニングする。これが一番大事です。寝起きが一番体の中に血糖が少ない状態です。この状態でちょっと無理して体を動かすことで、体は脂肪を燃やさざるを得なくなります。無理やり脂肪燃焼回路を回していくのです。
また、トレーニングの内容は、筋トレみたいな激しいトレーニングではなく、有酸素運動。例えば、ジョギングやランニング、サイクリングや水泳などがいいでしょう。ただ、朝一でその環境が整っている人も少ないでしょうから、ジョギングをすることになる人が多いでしょう。息が上がるほどのスピードで走る必要はありませんが、散歩よりは少し早め、汗ばむくらいのスピードにしてください。脂肪燃焼回路を回すトレーニングと、心肺機能を高めるトレーニングと、筋トレになるようなトレーニングは異なります。筋肉に疲れが残るほどじゃなくていいですが、汗ばむほど。この強度で脂肪をゆっくり燃えやすくしていきましょう。
トレーニング時間は30分以上。脂質が燃え始めるのにそれぐらいの時間がかかると言われています。朝の30分は大事なのはわかります。が、山でのバテを防ぐためにはこれぐらいは必要です。週2回30分。1週間に合計1時間だけトレーニングしてください。
ロカボ登山の行動食
行動食で必要なのが、高たんぱく、高脂質。
高たんぱくは、運動中に大事なことです。これは、ロカボ登山に限らず。ただ、特にロカボ登山では、筋肉を補修するための糖質もないことになりますので、タンパク質の補給が大事になります。
行動中はBCAAを入れましょう。分岐鎖アミノ酸と言って、イソロイシン、ロイシン、バリンの3種類のアミノ酸。これにアルギニン、グルタミンなどが必要になります。アミノバイタルでもいいですし、水分としてアミノバリューなどを使ってもいいでしょう。錠剤で入れるのもいいと思います。
行動終了後はしっかりとタンパク質を入れるために、プロテインを飲むのがいいでしょう。これで一気に20g程度のたんぱく質摂取となります。このタイミングでは吸収の速さが必要なので、ホエイプロテインが最適。
高脂質は、中鎖脂肪酸とオメガ3系の脂肪。
中鎖脂肪酸はMCTと言われる最近注目の脂質で、一般的な油よりもすばやく消化・吸収され、すぐにエネルギーになりやすいという特長があります。モノとしては、ココナッツオイルやパームフルーツ、牛乳などに含まれるもので、中鎖脂肪酸を100%抽出したものをMCTと呼びます。一般的な脂質に比べ5倍程度早くエネルギーとして分解されます。
オメガ3系の脂質は、 「EPA」(エイコサペンタエン酸)と「DHA」(ドコサヘキサエン酸)で、イワシ、サバ、サンマといった青魚に多く含まれます。 魚以外ではクルミなどのナッツ類に含まれます。行動食にナッツを摂っている人が結構いますが、とても理にかなっているのです。
一気に減らすのは危険。
どの程度体がファットアダプテーションに慣れてきているかを示す指標がないので、一気に脂質のみの行動食にするのは危険です。ある程度の糖質をザックに入れて、いつでも糖質を摂れるようにしながらロカボ登山にトライするのがいいでしょう。
私は、試行錯誤の末ではありますが、完全に山の行動食を糖質オフにしていて、チーズ、サラダフィッシュ、サラダチキン、プロテインバーなど。ばてにくくなったし、休憩直後の体が重い感じがなくなりました。
バテにくい体を作りたいアナタ、ぜひトライしてみてください。その価値はありますよ!
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